食卓にお花を飾る。センスがいい人だけの楽しみだと思っているかもしれませんが、実はとっても簡単なんです。むずかしいことを考えず、家にある器を使って好みのお花をいけてみてください。お花のプロが教えるコツを少しだけ覚えておけば、誰でも手軽に季節のお花で一輪挿しを楽しめますよ。
プロが教える!一輪挿しの生け方

お部屋にお花を飾ったことはありますか?
試してみると、これがとってもいいんです。身近なところに生きたお花があるだけで、いつもより元気になれたり気分がリフレッシュしたりする。忙しい人は「花を飾る余裕なんてない!」というかもしれませんが、そういうストレス漬けの人生にこそ生きたお花が必要だと思いますよ!
特におすすめしたいのが、食卓の装飾としてお花を飾ること。お皿の上を盛り付けるようにテーブルを彩ると、テーブル上の季節感が増して、いつもの料理もひと味違うように感じられるんです。

お花になじみがないという人は、手間なくできる一輪挿しからはじめてみましょう。おウチに花器がなかったとしても堅く考える必要はありません。家にあるものを花器の代わりにして思うまま生けてみてください。いけばなの系譜には、そういう自由なスタイルもあるのです。
とはいえ、見栄えよくいけるコツくらいは取りかかる前に知っておきたいところですよね。そこで、いけばな教室「花と鋏」を主催する小原流の考甫(こうほ)さんに、器の特徴ごと、どんなお花をどんなふうに生けたら食卓の上で素敵に見えるか、教えてもらいました。
1. 一合徳利+ガーベラ

日本酒をたしなむ人の家ならひとつはありそうな一合徳利。「細長くて口のすぼまったスタイルは、花器としてはオーソドックス。一輪挿しとして使うには十分なアイテムです」と考甫さん。
「こういうものを花器にするときは、器の高さと同じくらい茎を長くとったほうが収まりがいいんです。ガーベラは葉がなく、やや単調に見えがちなので、今回は口元にもう一輪さして、低いところにもポイントをつくりました」

お花を長めに高くいけるときは、まっすぐ直立させるよりもやや左右にお花をふったほうが姿がよくなるとのこと。少し茎を曲げるだけで、俄然見栄えがよくなるそうですよ。
エレガントでかわいらしいガーベラ。スイーツを食べるときに傍に置かれていたら……、それだけでお菓子の香りや甘みが増したように感じられそうですね。
2. 一合徳利+ひまわり

一合徳利を花器にして、今度はひまわりを生けてもらいました。生け方はガーベラとほぼ同じですが、「お花が上を向くよう調えました」と考甫さん。

「お花は太陽の方、上を向くようにいけたほうが姿がいいんです。口元のひまわりは、上を向かせるために縦割り留めをしました。切り口を割き、支えとなる留め木として家庭用の竹串や爪楊枝を挟み込んだんです。こうすれば花器の中でつっかえ棒の役割を果たして、自分好みの深さや角度でお花が留まるよう調整できます」
まぶしく黄色いひまわりの一輪挿し。暑い季節、冷やし中華やそーめんなどの冷たい食事の傍に、おひとついかがでしょうか。
3. バルーン状の器+グロリオサ

バルーン型の丸い器に燃え上がるようなグロリオサ。目が覚めるように見栄えのよい一輪挿しになりました。
「高さのない花器に長い花をさしてもバランスが悪いので、ボリュームのある低めのお花を飾りました。口が大きい器なので、ほかの植物の葉をストールのように這わせて見栄えを整えています」
考甫さん曰く、「こういう口が大きな器で一輪挿しをするのはむずかしい」とのこと。理由は、「お花をうまく固定できないから」。

じゃあどうやっていけるといいんですか?と訊ねると、「いいものがあるんです」と考甫さん。その手のひらには、プラスチック製の小さな剣山。「こうしたものを器の底に置くだけで、とっても簡単に見栄え良く飾れる」といいます。改めて使うところを見せてもらうと、本当に器の底に置くだけ。そこに花の茎をさすように置くと、見事にお花を固定することができました。
オードブルが並ぶ華やかな食卓にあってもしっかりと存在感を示してくれそうなグロリオサ。炎にも似たその姿は、楽しいひとときの盛り上げ役として大いに活躍してくれそうです。
※撮影に使用した器は考甫さんの私物
4. 水差し+ドウダンツツジ

「手頃なサイズの水差しに枝ものをさしてみる。これだけでも食卓で映えます」
そういって考甫さんが取り出したのは、やや角ばった形状の水差し。水をたっぷり注いで、そこに枝振りのよいドウダンツツジをさしました。少し離れて眺め、いくつかの枝をハサミで除いたらできあがり。
「何気なくさすだけでも見栄えはよくなるのですが、しいてコツをいえば、中心軸を左右どちらかにずらすこと。これも、ドウダンツツジを少し傾けて中心軸を外しています。ドウダンツツジは保ちがいいので、この時期でも2週間ほどは楽しめると思いますよ」
水差しにさしたドウダンツツジをテーブルの端に置く。差し込む陽光で輝く薄葉、食卓に浮かんだ葉の影は、朝食の一風景をいつもより美しく見せてくれそうです。
5. ビニール製の花瓶+バラ

考甫さんのバッグから出てきたシャンプーの詰め替えパックのようなビニールシートが、見る間に花瓶に変身しました。こんなものもあるんですね。
「『D-BROS』というブランドのフラワーベースです。ビニール製で安価ですし、こういうものならはじめての花器として買いやすいんじゃないでしょうか。細くて長いオーソドックスなスタイルで、扱いやすいところも初心者向きです」
そこに生けたのは薄いピンク色のバラ。
「先の徳利と同様、茎の長さは細長い花器に合わせ、軸を少しだけ中心から外しました。葉のあるお花を上手にいけるコツは、水に浸かる部分の葉を除くこと。バラは葉がたくさんついていることがあるので、適宜減らしてあげると見栄えよく飾れるでしょう」
ホームパーティーの飾りのひとつにしたくなるようなガーリーポップな一輪挿し。おやつの時間、カラフルなお菓子と一緒にテーブルに置いて眺めてみたいと思いませんか?
6. 背が低い花器+ヒペリカム

少しボリュームがあって、ずんぐりとした形状の器。こういう背の低い花器にお花をいける場合、どういうポイントを押さえればいいのでしょう。
「低めに生けてあげたほうが収まりがよくなります。この手の器に細くて長いものをいけるのはむずかしいんです。今回は少しずつ形状の違うものが4つあったので、ヒペリカムがあちこちに向くよう置いてみました。こうすると、テーブルのどこからでもいずれかがよく見えますね」
ヒペリカムの穏やかでやさしい色合いは、朝食の食卓でこそ映えそうな気がします。ぜひトーストにでもかじりつきながら眺めてみてください。
「水切り」でお花を長持ちさせる

さて、ここまでを読んで「やってみようかな」という気持ちになったら、水切りを覚えておきましょう。これを知っているか否かでお花の保ちがまるで変わります。
飾る器とお花を決めたら、器に合わせてお花の茎を切らなければいけません。その際、バケツにたっぷり水を張り、切ろうとしているお花の茎をそのなかに沈めてください。そして、水のなかのできるだけ深いところで茎をななめに切り落とす。こうすることで、導管(茎のなかにある、植物が水を吸い上げるための管)内への空気の侵入を防げます。ななめに切るのは、そうしたほうが切り口の断面積が広がり、水の吸い込みがよくなるから。
切り口の状態が悪いと、切り花が上手く水を吸い上げることができず、すぐに水不足となってしまいます。水切りによって切り口を整えてあげるのは、お花をいける上での基本の“き”。切れ味のよいハサミを用意して、スパッとキレイに切り落としてくださいね。
好きなお花を好きな器で。一輪挿しは自由が正しい

今回、小原流の考甫さんに6つのパターンを見せてもらいましたが、ご紹介した内容にとらわれる必要はありません。飾り方に不正解はないし、一輪挿しに二輪さしたってかまいません。コツはコツとして押さえつつ、ぜひ自由な発想で一輪挿しを楽しんでください。
季節感そのものである生きたお花を食卓などの身近に置く。それがどれだけ素敵なことか実感できたなら……。一輪挿しをきっかけにして、暮らしが少し豊かになった証拠ではないかと思いますよ。
教えてくれた人

考甫(こうほ)2005年にいけばな小原流に入門し、2010年にはいけばな教室「花と鋏」を開講。2012年、小原流東京支部の年間優秀者表彰を受ける。現在は小原流二級家元教授
いけばな教室「花と鋏」
「いけばなをカジュアルに学ぶ、楽しむ」をモットーとするいけばな教室。生徒は若い人が多く、初心者も多数。伝統的な“和”のいけばなから、現代の生活空間にフィットしたカジュアルなテーブルフラワーまで、気軽に楽しく幅広く学び、お稽古できる。なお、小原流の公式な教室なので、お稽古を重ねれば許状(お免状)の取得も可能。
■住所:東京都目黒区上目黒5-30-1 EAT TOKYO JAX(仮移転中)
■問い合わせ:info@hanatohasami.com
取材・文・写真:植松富志男(macaroni編集部)