劇場版『きのう何食べた?』で約1年半ぶりにシロさんとケンジを演じた西島さんと内野さん。役柄同様にお互いを思いやり、リスペクトしあう大人の男たちの、優しさの表現方法とは?

“僕のアイディアを理性的に受け止めてくれる西島さんには、絶対的な安心感がある” ――SEIYO UCHINO

“内野さんと向き合うだけで心が否応なく反応する。特別な人です” ――HIDETOSHI NISHIJIMA

お互いを繊細に思いやる気持ちはずっと変わらない
弁護士のシロさん(西島)と美容師のケンジ(内野)の男二人暮らしを描いたよしながふみ原作のささやかな物語は、2019年に深夜ドラマで放送され、大きな反響を呼んだ。
内野
ちょっと枯れ始めた中年のゲイカップルの物語が、まさか映画になるなんてね。男女の恋愛でもいろんな場面で小さく傷つくものだけど、男同士だと妙に共感したり安心して見てもらえるような不思議な感じがあったみたい。
西島
原作の素晴らしさのひとつは、役がちゃんと年を取ることだと思っています。回を重ねるごとに徐々に関係が深まっていきましたし、劇場版ではついに史朗が嫉妬をする逆転現象が描かれます。松村北斗くん(SixTONES)演じる田渕とケンジが並んで歩くところを目撃してしまうんですよ。
内野
冷静沈着なシロさんが嫉妬にくるう姿は笑えるはず。ただ、それは相手を思いやりすぎて妄想しちゃう、可愛いすれ違い。お互いを繊細に思いやる気持ちは、シリーズ通して変わっていません。

シロさんが作る料理の数々も魅力の本作。撮影は実際に二人が調理する自由演技なのだそう。 西島
今回は厚揚げの切り方をアドリブで間違えていましたよね。
内野
うん。ケンジがやらかしてシロさんがツッコミを入れる関係性が二人らしいなと思って。
西島
劇場版で印象的だったのはりんごのキャラメル煮。トーストにアイスとシナモンものせて。
内野
あれは美味しかった!あとアクアパッツァのあとの雑炊もたまらなかった。やっぱりパートナーと美味しいものを食べて美味しいねと分かち合えるってことはとても大事。あらためて、ものすごく根源的なことに気づかせてくれる作品だなと思います。

撮影中に触れたお互いの優しさについて
このシリーズで初共演を果たした二人の絆を深めたのも、料理。
内野
ドラマ版で朝から晩までひたすら食べる芝居を撮っていたときに、俺がしくじっても西島さんが「大丈夫。全然大丈夫っすよ」って優しくフォローしてくれたよね。
西島
NGを出すとどんどん食べる量が増えるんで、ハマると大変なんですよね(笑)。
内野 あの時間はすごく濃かったなあ。控え室でもずっと話してた。
西島 めちゃめちゃプライベートの話もしましたよね。
内野 そこで無駄な緊張がどんどんほぐれていった気がします。

お互いを信頼する二人は、現場で間近に優しさに触れる瞬間も。 西島
松村くんとか磯村(勇斗)くんとか、後輩にすごく熱心にアドバイスされる姿は優しいなって。
内野
当たり障りなくスルーするよりエネルギーをがっと上げて厳しいことも伝えたほうが、本人にとってはいいでしょ? 人当たりいいほうが好かれるんでしょうけど。
西島
内野
不器用なんです(笑)。
西島
でも僕も気になったことは口に出すようにしています。今日も別作品のリハーサル中、ものを渡すタイミングが気になってしまって。悩んでいたら若い俳優さんに「ここで渡すのはどうですか」とアドバイスされて素直に「ありがとう!」って言っちゃいました。
内野
西島さんは「こうかな」「あ、やっぱこうかな」と真剣に悩まれているから、みんなが自然と巻き込まれちゃうんです。本人が優しいのはもちろん、周りがつい優しくしたくなる人だと思います。
Qお二人にとっての思い出の味は?
劇場版『きのう何食べた?』にはシロさんのおふくろの味が登場。お二人にとっての思い出の味を聞いてみると…

“お正月に母が作ってくれた。りんご羹が僕の思い出の味です” ――HIDETOSHI NISHIJIMA
りんごをすりおろして寒天で固めたデザートが、わが家のお正月のおせちのあとの定番でした。母からレシピもちゃんと教わりました。

©2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 ©よしながふみ/講談社
撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/亀田 雅(西島さん)、佐藤裕子(内野さん) スタイリスト/カワサキタカフミ(西島さん)、中川原寛(内野さん) 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2021年11月号掲載