03.17Tue/火

LOCARI(ロカリ)

ロマンあふれる。川越で見つける醤油と日本酒の“発酵”旅

歴史を感じる蔵の街・川越。美しい街並みと、温かい人柄に触れながら、おいしいものを食べ歩くぶらり川越散歩を満喫してきました。今回注目するのは“発酵”。250年続く「松本醤油商店」と、川越に酒蔵を開いて11年の「鏡山酒造」にお邪魔してきました。

川越で“発酵”をめぐる旅

Photo by muccinpurin
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発酵というと、どのようなものを思い浮かべますか?乳酸菌からできるチーズやヨーグルト、納豆菌で作る納豆だけでなく、酵母を使ったパンも発酵商品のひとつです。

発酵を利用して作られるものの中から、今回は「醤油」と「日本酒」をピックアップ!川越にある醤油蔵と酒蔵を見学させていただきました。

麹という共通の材料から作られる醤油と日本酒。そこには不思議な繋がりとロマンあふれる物語がありました。

創業254年。受け継がれる醤油造り

Photo by muccinpurin
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まず伺ったのが「松本醤油商店」。天保元年ころに作られた木造の建屋は、188年という時の重みを感じます。

建屋の外にも醤油独特のあの香りが漂い、ずっと香りを楽しんでいたくなるほどです!

Photo by muccinpurin
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「松本醤油商店」専務の松本さんに醤油蔵を案内していただくことに。

醤油づくりは大豆を蒸すことから始まります。入り口にあるこちらの大きな缶は、大豆を蒸す専用の機械で、一度に600kg以上の大豆を蒸せるそう。埼玉県産の大豆を使って、地産地消にこだわっています。

Photo by muccinpurin
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奥行きがあり閉鎖された空間は「麹室(こうじむろ)」と呼ばれる、醤油づくりに欠かせない部屋。埼玉県産の炒った小麦と、大豆を蒸したものを入れ、麹菌をまぶして丸3日間寝かせます。

温度や湿度は機械で管理されていますが、最後は人の勘が頼り。夜中でも麹の状態を見に麹室に入るそうです。

歴史ある蔵のなかには麹菌や酵母菌、乳酸菌といったさまざまな菌が生息しています。温度管理を間違えてしまうだけで納豆菌が繁殖してしまい、醤油が作れなくなってしまうこともあるんだそうです。菌との共存が大切なんですね。

木造の醤油蔵に棲む、見えない功労者

Photo by anmitsu
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奥に進むと大きな木の桶がいくつも並んでいます。醤油の香りも、先ほどよりずっと濃くなってきました。

杉でできた桶はとても深く、その大きさに圧倒されます。

Photo by muccinpurin
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中には、先ほど麹室で作った麹と食塩水を混ぜた「もろみ」が入っています。

その昔、川越であった大火や戦争、地震など数々の苦難を免れて残った大切な大切な杉桶たち。これらの杉桶が醤油づくりを守っているんですね。

桶だけでなく、壁や天井、梁にいたるまで、木でできた蔵の中には、「蔵酵母」というその蔵独自の酵母が棲みついていて、その酵母が醤油の味に大きく影響を与えているんだそうです。

Photo by muccinpurin
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もろみを1年ほど寝かせると、こんなに色が濃く、どろっとした状態に変化します。

「温かい夏に来れば、もろみが歌を歌うのが聴けますよ!」と松本さん。ガスが抜けるときにぷちぷちと音が鳴るそうです。“もろみが歌を歌う”という表現がとてもロマンティックですよね!次はもろみの歌を聴きに、かならず夏に来ます!

桶のなかにも酵母が棲んでいるので、その酵母がいい働きをして「松本醤油ならではの醤油」ができあがります。見えないながら、酵母や菌はかなりの功労者ですね。

Photo by muccinpurin
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杉桶は釘を一本も使わず、木だけで作られているそう。松本さんが中学生のころ、杉桶を束ねている“たが”が外れて、蔵の中でもろみの大洪水が起こったそうです。

ところが壊れた桶の木片の内側に、桶の製造者の名前と作られた年代が書かれたものが発見されるという奇跡が。

内側にひっそりと記す職人のプライドと、偶然たがが外れたことによって発見される名前。醤油づくりはどこまでもロマンティックだな……と、歴史にうっとりしてしまいました。

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続いては寝かせ終わったもろみを絞る作業。布にもろみを流し込んで包み、何枚も重ねて重しをのせ、「ふね」と呼ばれる道具でプレスします。

3日かけてじっくりと絞られた醤油は、加熱殺菌した後にビンに詰めて完成です。

Photo by muccinpurin
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醤油を絞った後に布を開くと、中から現れたのは、「醤油かす」と呼ばれる搾りかす。

布を開いた瞬間、一同「おいしそう~!」の大合唱。確かにおいしそうな香りと見た目なんですが、食べることはできないそう。醤油かすは牛のエサになるそうですよ。

「お酒も同じような方法で作って、その搾りかすは酒粕として有効活用できるのに、醤油は……なにかいい方法を考えたいんですけどね」と残念そうな松本さん。なんらかの方法で商品化される日を、期待しながら待ちましょう!

併設のショップでは醤油のテイスティングも!

Photo by muccinpurin
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蔵を見学したあとは、お楽しみのショッピング♪

併設されたショップには、さまざまな種類の醤油が並びます。名物の「はつかり醤油」の中でも、鮮度が保てるフレッシュキープボトルのものがおすすめだそうです。

Photo by muccinpurin
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店内には醤油をテイスティングできるコーナーもありました。お好みの醤油をおみやげにどうぞ。

川越の新名物!「醤油プリン」

Photo by muccinpurin
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川越醤油プリン 378円(税込)

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松本さんイチオシの醤油アイテムが「川越醤油プリン」。さいたま市の老舗パティスリー「ダンテ」とのコラボ商品で、昨年12月の発売から、ジワジワ人気を集める川越の新名物です。

Photo by muccinpurin
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チーズを使った濃厚プリンを、天保蔵醤油を使用したカラメルソースで上下からサンド。上のソースはみたらし団子のような甘めの仕上がりで、プリンによく合います!

醤油が香る絶品のプリンは、お店の前のベンチでもいただけますよ。

店舗詳細

■店舗名:株式会社松本醤油商店
■最寄駅:JR「川越駅」から徒歩約20分
■電話番号:049-222-0432
■営業時間:9:00~18:00
■定休日:無休
■公式HP:https://www.hatsukari.co.jp/

醤油蔵見学

■見学時間:平日/13:00~、土日/13:00~、14:00~、15:00~(所要時間約20分)
■料金:無料
■予約:基本的に予約は不要。
団体(10名以上)の場合のみ、下記で予約を受付。
大型バスについても、予約時に要相談。
TEL:049-222-0432
受付時間:平日9:00~17:00のみ
※醤油製造中及び加工中は見学できない日もあります。

酒蔵「鏡山」復活には、ドラマがあった…!

Photo by muccinpurin
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醤油蔵に続いて、お隣にある「小江戸鏡山酒造株式会社」へ。

「実はもともと鏡山酒造は、別の場所にあったんです。」とは案内役を務めてくださった鏡山酒造の五十嵐さん。明治8年から100年余り愛された地元の名酒蔵は、惜しまれつつも平成12年に廃業してしまいます。

「川越で愛された酒蔵をなんとか復活できないか」と地域の力を借りながら模索し、新しい酒蔵の場所となったのが、現在の松本醤油の隣の土地でした。

日本酒造りも麹が大切!

Photo by muccinpurin
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日本酒造りに欠かせないのは、なんといっても米と水。米は一年を通して、7度の水で時間を計りながら洗います。これは水の温度や研ぎ時間によって、米に浸透する水分をコントロールするため。

研いだ米は甑(こしき)と呼ばれる特別な釜に入れて蒸します。底に敷かれている布ぶくろに入っているのは「疑似米」と呼ばれるプラスチックのお米。下から上がった蒸気が、疑似米を通ることで分散され、全体に均一に行き渡るんだそうです。

Photo by muccinpurin
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続いては麹室。「酒づくりは豆腐屋さんと一緒で、朝の仕事」ということで、この日は麹づくりは終わっていましたが、麹室の中を見せてもらいました。

温度管理が徹底されている麹室では蒸した米に種酵母をかけて、麹を作ります。醤油づくりと似ていますね。

Photo by muccinpurin
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麹と仕込水、蒸し米をタンクに入れて、じっくりと30日かけて発酵させます。その間、発酵が進むにつれて米の粒が溶けてなくなっていきます。

米を蒸して作るのは、炊いたお米だとやわらかすぎてしまうから。蒸し米を30日かけてじっくりと溶かすことで、発酵が進みます。

こうしてタンクの中で糖化と発酵を繰り返したもろみを、絞ってできたのが日本酒です。

Photo by muccinpurin
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鏡山酒造では、機械ではなく、この道具を使い手作業で絞ります。これがなかなかの重労働だそう。

大きな工場なら大量生産がかなうのですが、品質を一定に保つために手間をかけて絞っていきます。

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ここでひとつ疑問。先ほど見学した松本醤油と鏡山酒造は、目と鼻の先にあるお隣さん。酵母や菌を扱う者同士、こんなに近くてケンカしないのかが気になります。

五十嵐さんいわく「うちは他の菌が入らないようにするためにモルタル造りの建物にしているのと、酵母の種類が違うのでそこまで影響しあわないんです」とのこと。松本醤油は木造の建屋に歴史を重ねた蔵酵母が棲んでいるという話でしたが、こちらはあえてのモルタル造りなんですね。

酒粕は女子にうれしい美肌アイテム!

Photo by muccinpurin
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酒粕 400g入り 540円(税込)

先ほどの機械で絞った酒粕がこちら。スーパーなどで見かける板状のものと比べると、かなりやわらかいんです。

実は絞ろうと思えばこの酒粕からまだ日本酒が絞れるけれど、渋みや雑味が混ざらないようにあえてここまでで止めているんだそう。

この酒粕は、やわらかくて風味がよく、粕汁や美肌パックに活用できると人気商品なんだとか。確かに、そう話す五十嵐さんのお肌や手はモチモチのつるつるでした!

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酒粕クリームチーズ 540円(税込)

こちらも人気商品の「酒粕クリームチーズ」。クリームチーズを先ほどの酒粕に漬けて、じっくりとお酒の風味を染み込ませています。

五十嵐さんは「これをつまみに、日本酒を呑むのが最高」なんだそうですよ!

「酒粕」と「酒粕クリームチーズ」は「川越市産業観光館 蔵里」や川越市内の酒屋などで購入できます。

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実は、兵庫、京都、新潟、に次ぐ全国第4位の日本酒生産量を誇る埼玉。ちょっと意外な気もしますが、「平成の名水百選」に4か所も選ばれるほど、水が豊かな県なんです。

「この地で鏡山酒造を復活できたのは、松本醤油さんが昔から使っていた質のいい水があったから。そのおかげで、また鏡山の日本酒を作ることができました。」と語る五十嵐さんの胸には「KAGAMIYAMA Episode2 Since2007」の文字が。

同じ酵母を使って作られるまったく違った「醤油」と「日本酒」にこんな物語があったとは……。川越の地域と人が作った日本酒なんだな、としみじみ感じました。

■店舗名:小江戸鏡山酒造株式会社
■最寄駅:JR「川越駅」から徒歩約20分
■電話番号:049-224-7780
■公式HP:http://www.kagamiyama.jp/

※通常は酒蔵見学は行っていません。

鏡山酒造の日本酒は「蔵里」で味わえます!

Photo by muccinpurin
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鏡山酒造で酒づくりを見学したら、日本酒を味わいたくなりますよね。

もともと鏡山酒造があった場所にできた「川越市産業観光館 蔵里」には、鏡山酒造のブースがあり、カウンターで実際に味わうことができます。

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こちらのスパークリング日本酒「南天群星」はサーバーから直接注いでくれる、このカウンターだけでしか飲めないひと品。

はかなく消えるシュワシュワの泡が、口のなかで弾けます。とろりと濃厚な飲み心地とお米の甘みを感じられる、初心者でも挑戦しやすい日本酒です。

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■店舗名:川越市産業観光館 蔵里
■最寄駅:JR「川越駅」より徒歩約20分
■電話番号:049-228-0855
■営業時間:11:00~19:00
■定休日:無休
■公式HP:https://www.machikawa.co.jp/saketype/post-613

ロマンあふれるぬくもりの街、川越

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帰り際に見つけた、茶色く色づいた杉玉。秋に新酒ができた際に、新しい緑の杉で作ったものを酒屋にぶら下げるのがならわしだそうです。それが松本醤油の店先にぶら下がっていた理由がわかった気がします。

「醤油」と「日本酒」というまったく異なるふたつのもの。材料や製造過程はもちろん、ものづくりに関わっているみなさんの想いが込められているからこそ、地元で愛されているのだと感じました。

新酒ができて、青々と茂った緑の杉玉に付け変わるころです。ぜひ、ロマンと温かさがあふれる川越の街を訪れてみてくださいね。

(文・写真:横田睦美、編集:伊集理予)

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この記事のライター

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