災害の備えとして実践している方も多いローリングストック。ただ、いざというときのために取り入れてみても、やり方がよくわからない、継続できないという方も。そこでこの記事では、防災士・防災共育管理士1級講師の大森智美さんにお聞きしたローリングストックを習慣化するコツをご紹介します。
おうち備蓄は管理できてる?もしもに備えて万全に

2022年3月11日、東日本大震災から11年の歳月が経ちました。ここ数年だけでも、さまざまな災害からコロナウイルスの感染拡大まで、生活においての不安はつきませんよね。何が起こるかわからない昨今、 “発生したときにはどんな対策ができるのか” を家族や大切な人と考える時間はとても大切です。
しかし、「備蓄品を準備するのは大変そう」「定期的に見直す必要があり、管理できるか不安……」と思う方も多いのではないでしょうか。
そんな方のために、整理収納アドバイザーであり、防災士としても活動している大森智美さんにローリングストックを習慣化するコツを教えてもらいました。

整理収納アドバイザー、防災士/大森智美さん
「みなさんも聞いたことがあると思いますが、30年以内に大きな地震が発生する確率は首都直下地震が70%、南海トラフ巨大地震で70~80%と言われています。30年以内というと、生きている間に遭遇する可能性があるので不安ですよね。
もちろんそれ以外の地震や台風、水害などの自然災害、日常生活でも停電や断水などのライフラインが使えなくなることもあるでしょう。今の時代、家族が数日過ごせる最低限の備蓄の用意は必須になっていると言えます。
ご紹介するローリングストックは防災の備えとして役立ちますよ。この機会に備蓄の見直しをしてみてくださいね」
ローリングストックとはどんな備蓄方法なの?

「災害時の食品の備え方は大きく分けて、 “長期保存可能な非常食を備えておく方法” と “普段食べ慣れている食品をストックする方法=ローリングストック” のふたつです。
ローリングストックとは文字どおり、まわしながら備蓄するということ。普段食べ慣れている食品を少し多めに買い、日常生活で消費し、買い足していくといった一定量の食品が常にストックされている状態を維持する備蓄方法です。
一方、長期保管できる非常食は数年間管理不要というメリットがありますが、一から用意しなければいけない、食べ慣れていないなどのデメリットもあります。非常食を日常生活で食べるというイメージがしにくく、消費期限が過ぎたら止むを得ず捨ててしまうというケースが多いですが、ローリングストックならそういったムダを防げるんです」
コツを掴めば無理なくローリングストックを習慣化できると大森さん。ご本人も実践しているポイントを7つ教えてもらいました。
ローリングストックを習慣化する7つのコツ
1. 普段から食べている食品を少しだけ多めに備えておく

「備蓄食と言うと、レトルトのイメージがある方も多いかもしれません。しかし、ローリングストックとなると多くのレトルトを消費して、また備えて……と考えると現実的ではないんです。
おすすめは、普段から食べている食品を少しだけ多めに備えておくこと。例えば家族が普段からよく食べる麺類やスープ、缶詰、子供のおやつなどを多めにストックしたり、米は1カ月分は困らないように循環しながら備えたりすると安心です。
また、買い物の際によく買う食品の賞味期限をチェックしてみてください。意外と半年以上もつ食品は多いので、少し賞味期限が長いものを中心にローリングストックしておくと焦って消費しなくて済みますよ」
2. 栄養のバランスが整うものをチョイスする

「災害時、見落とされがちなのが栄養バランス。どうしても炭水化物や脂質の多い食事になってしまいます。その後の生活で体調を崩さないように、ローリングストックする際も栄養バランスを考慮しながらチョイスしましょう。日頃から消費する際も、栄養バランスを考えながら料理に使えますよ。
とくに乾燥海藻類や乾燥野菜、トマト缶、コーン缶辺りはとても便利です。災害時にも普段の生活にも手軽に使える食品は重宝します」
3. 分散収納をする

「『そもそもキッチン周辺にストックして置ける場所がない』『ストックしても家族に食べられて、気づいたら減っている』そんなお悩みもよくお聞きします。とくに人数が多いとローリングストックといえど場所をとりますよね。
このふたつのお悩みを解決するのは、用途に合わせた分散収納です。私の自宅でも、日常的に使うものや賞味期限が短めの食品はキッチン収納に。ちょっと賞味期限の長めのものや+α多めに備えているものは別の収納場所にストックしています。
分散収納は、ローリングストックのサイクルがごちゃごちゃにならないのもメリットです。食べる順番を間違えにくくなりますし、キッチンの1カ所に備えるよりも場所を確保しやすく収納のストレスも減りますよ。
また、扉が開かなくなったり、家具が倒れたりしたらストックしていたものが使えなくなることも。分散収納しておくことでリスクも軽減できます」
4. ひと目で在庫が把握できるように整理する

「賞味期限を切らしてしまうのは、食品が埋もれていて管理ができていない、あるのを忘れていたという場合もあります。せっかく備えても存在を忘れたら意味がなくなってしまいますよね。
まずは収納する場所を整理しましょう。食品を縦に立てて埋もれないように収納したり、主食副菜、スープ類で分けたりして、ひと目で在庫が把握できるようにします。種類ごとに大まかに分類して収納すると在庫がより分かりやすくなりますよ」
5. 見直し時期を決めておく

「賞味期限のある食品はどうしても見直しが必要です。賞味期限を見逃していた、いつの間にか食べきっていてストックがなくなっていた……なんてこともあります。見直しをすることで食品ロスすることなく、上手に管理ができますよ。
最低でも、キッチンの食品ストック(日常的に使う、賞味期限が短めの食品)は約1カ月に1回ほど、別の場所に保管している食品ストック(比較的賞味期限の長い食品)は、年2回見直しをしましょう。年2回だと忘れそうになるので、私は東日本大震災があった3月と、防災の日が制定されている9月に見直すと決めています。
見直したときに発見した期限が切れそうな食品は、キッチンのバックカウンターに置いておき、数日以内に消費して新しいものを買い足すというサイクルにしています」
6. 大量の水は賢くサイクルさせる

「水は災害時、とても貴重。飲み水や調理用だけでなく、手洗い、洗い物、トイレ、入浴など生活用水で想像以上にたくさんの水を使用します。
スーパーで売っている国産のミネラルウォーターは賞味期限が1~2年程度で、手軽に購入でき価格もお手頃。一方、スーパーで売っているミネラルウォーター以外に、5年、7年ほど保存ができる長期保存水があります。長期保存水はコストは高めですが、長い期間管理不要というメリットがあります。
どちらにもメリットデメリットがあるため、水のローリングストックでおすすめなのは、半分ずつ備えること。我が家では、スーパーの水は消費しやすい夏場に使用してローリングストックしています。
また、一気に賞味期限が切れて消費に追われないよう、購入時期は少しずつずらしましょう。無理のない管理で習慣化しやすくなります」
7. 日用品のローリングストックも忘れずに

「ガスボンベやカセットコンロがあれば、ライフラインが止まっても調理ができます。使用量や人数、使用時の気温により変動しますが、まずは1日1本を目安にして備えておきましょう。カセットコンロやガスにも使用期限があるので、こちらも食品とあわせて見直しが必要です。
そのほか、ラップやアルミホイル、袋類なども少し多めにストックしておくと安心!ペーパー類は、買い占めが起こると不足しがちな商品です。普段から1カ月分は自宅にあるようにローリングストックしておきましょう。
さらに、マスクやウェットティッシュ、消毒用のアルコールなどの衛生用品から、生理用品、赤ちゃんがいるご家庭ではオムツまで、常に在庫が1パック分あるのが望ましいです」
どのくらい備えがあればいい?世帯ごとの目安

1~2人世帯の備え(大人のみ)
「1~2人世帯の備え一週間分を想定した場合、水は大人1人あたり最低3Lは必要なので、大人2人なら42Lは備えておきたいところです。食品も、普段食べ慣れているものを中心に一週間困らないストックを考えてみてください。
日中は仕事で家にいないという方は、職場に3日分程度の水や食料、スニーカーを置いておくなどの備えをしておくとよいです。外出が多い方は、飲み物やちょっとしたおやつ、モバイルバッテリーなどを持ち歩くよう意識しましょう」
1~2人世帯の備蓄量 目安
・水:1人1日3L×2人×7日=42L
・食料:1人1日3食×2人×7日=42食
・カセットコンロとガス:1本×7日=7本が目安
・非常用トイレ:1日1人5回使用×2人×7日分=70回分
・灯りと電池:灯りは各部屋に最低ひとつずつ、枕元にも置く。電池の備えも必要
・情報:非常時に情報が得られるようにラジオとイヤホンを準備
・そのほか:通勤通学で外出する機会が多い方はモバイルバッテリーの準備、日用品も数週間は困らないストックを
3~5人世帯の備え
「5人世帯の場合、一週間で最低備えたい水は105L。なかなかの量ですよね。まずは3日分の備えをして、余裕が出てきたら5日分、7日分と少しずつ備えを増やしていきましょう。
お子さんがいるご家庭では、備蓄食を備えていても “いつもと違う味だと食べてくれない” ということも考えられます。いつも食べ慣れているおやつも立派な備蓄になるので、普段好んで食べている食品を入れてもOK。あとは、お子さんと一緒に試食をして決めるとよいですよ。
また、赤ちゃんのミルクや離乳食、家族にアレルギーや食事に制限のある方がいる場合は、対応食を多めに備えておくと安心です」
3~5人世帯の備蓄量 目安
・水:1日1人3L×5人×7日=105L
・食料:1人1日3食×5人×7日=105食
・カセットコンロとガス:1本×7日=7本が目安
(赤ちゃんのミルクが必要な場合は1日2本〜多めにストック)
・非常用トイレ:1日1人5回使用×5人×7日分=175回分
(子供がオムツを使用している場合は1パック分多めにストック)
・灯りと電池:灯りは各部屋に最低ひとつずつ、枕元にも置く。電池の備えも必要
(小さな子供がいる場合、両手があくようにヘッドライトがあると便利)
・情報:非常時に情報が得られるようにラジオとイヤホンを準備
・そのほか:乳幼児に使う日用品は困らないよう多めにする、1サイズ上のものをストックするなどの工夫が必要
ローリングストックを習慣化して災害に備える

いざというときに準備ができていないと意味がなくなってしまうので、ローリングストックを習慣化することはとても大切です。備蓄量や備えておくモノ・場所は、それぞれの世帯やライフスタイルによってさまざま。もし一週間ライフラインが止まって、買い出しにも行けない状況だったら?自分や家族はどんなものがあれば過ごせる?……自分事として想像しながら備えてみてくださいね。
急にやってくる災害に対し、備えあれば憂いなし。この機会に、今一度防災対策について考えてみましょう。
取材・文/内山 栞(macaroni 編集部)
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